渡邊酒造場の歴史
田野町唯一の蔵元
1914(大正3)年創業の渡邊酒造場。愛媛県出身の初代は、アメリカで林業にたずさわった後、製材所を営むために宮崎に移り住みました。その時に売りに出ていた焼酎蔵を買い取ったのが始まりです。創業当時はもともとその蔵にいた杜氏が焼酎を造り、初代が経営をしていましたが、2代目からは代々渡邊家が杜氏として焼酎を造っています。創業100年となった2014(平成26)年に代表取締役に就任した渡邊幸一朗氏は4代目杜氏。大学卒業後、別分野の仕事を経てから10年以上2代目、3代目とともに焼酎造りを行ってきました。県内産の原料にこだわり、本格焼酎を「宮崎」から「世界」へ発信していきたいと奮闘中です。
原料へのこだわり
焼酎造りは芋づくりから
渡邊酒造場では、焼酎の原料となる黄金千貫を自分たちの畑で栽培しています。田野町内に3町歩の畑があり、製造量の約8割をまかなっているといいます。
農薬をあまり使用しないで栽培するため、イモムシに葉を食べられてしまい、一晩で葉が全部なくなってしまうこともあるそう。ですが春に植えつけをし、秋の収穫までできるだけ土中で太らせた芋は、でんぷん質がしっかりと詰まった良質なものに育ちます。
米も宮崎市内の農家が栽培するものを使用しており、100%宮崎産の原料で焼酎造りを行っています。今年からは麦も宮崎産のものを使用する予定だそうです。
風土で酒を醸す
芋は収穫するとすぐに劣化が始まるため、掘りながらその場で選別を行います。このようなことができるのも自分たちで栽培しているからこそ。さらに芋の処理に関してもこだわりがあります。
「一般的に、芋は土を丁寧に洗い流して使用します。そうすると酒質もきれいな焼酎ができあがるんです。しかし、自分たちはそこまで神経質に土を除きません。土の中にも微生物や野生の酵母がすんでいて、発酵に適したものもいるからです。芋が育つ土壌や環境全体で焼酎を醸し出すという想いがあるんですよね」と幸一朗氏。
そうすることでもろみが元気になり、ほかでは味わえない焼酎ができるようになったと話します。
「各地域ごとに蔵元があった時代は、芋や米を自分たちで育てたり、近所の農家と物々交換したりして焼酎を造っていたようです。今は蔵元が原料を作っていると言うと驚かれることが多いのですが、当時は普通のことだったようです」と幸一朗氏が教えてくれました。今でこそ生産から製造、販売まで一貫して行うことを6次産業化と表現したりしますが、昔は当たり前のこととして行われていたことなんですね。
造りや味へのこだわり
その年の一番おいしい焼酎を目指して
「風土で酒を醸す」という想いは、造りにも生かされています。もろみの温度管理を徹底して行っている蔵元が多い中、渡邊酒造場では、どちらかといえば「もろみまかせ」。必要があれば櫂入れしますが、強制的に冷却したりはしません。
「手をかけすぎるのではなく、なるべく微生物たちに好きなようにさせて、何かあった時にさっと手を差し伸べられるよう遠くから見守っている感じですね」と幸一朗氏。そうすることで、濃厚な味わいの個性豊かな焼酎ができるようになったと話します。
「自分たちの焼酎造りは理想の味に近づこうとしているわけではなく、年ごとに違う原料の品質や気候、自分たちの技術を最大限に生かした結果、その年の一番おいしい焼酎ができたという考えですね」。
こうして出来上がった焼酎は、じっくりと3年ほど熟成させ出荷しています。
杜氏紹介
四代目杜氏・代表取締役 渡邊幸一朗氏
「原料が形を変えて商品になっていく過程をすべて見守ることができるのが、モノづくりの醍醐味だと思います」と話す幸一朗氏。「お酒は嗜好品なので、絶対に飲まなければいけないというものではありません。ですが価値を見出し、お金を払って選んでくれる人たちがいるということがやりがいにつながっています。"おいしかったよ""造ってくれてありがとう"という声が届くと本当に嬉しいし、支えてもらっているんだなと実感します」。
どんな風に焼酎を飲んでもらいたいですか?と尋ねると、「人それぞれ焼酎に対するイメージがあると思うのですが、なるべく先入観や予備知識を持たずに飲んで欲しいです。楽しく、できれば笑いながら。お湯や水で割って飲めるのも焼酎のよさ。ぜひ試してみてください」とアドバイスしてくれました。
昨年創業100年を迎え、今後は次の100年のために、しっかりとたすきをつないでいきたいと話す幸一朗氏。海外でも本格焼酎の認知度を高めていきたいと四代目杜氏の挑戦は続きます。
会社概要
会社名 | 有限会社渡邊酒造場 |
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住所 | 宮崎県宮崎市田野町甲2032-1 |
電話 | 0985-86-0014 |
FAX | 0985-86-0504 |
蔵見学 | 不可 |
webサイト | http://asahi-mannen.com/ |