松の露酒造の歴史
松の葉から滴る朝露の美しさ
日南市の城下町、飫肥にある松の露酒造。飫肥の街を縫うように流れる酒谷川のほとりにあります。創業は江戸末期といわれているのですが、昭和29年4月の今町大火災で本宅が類焼し、過去帳が焼失したために正確な年号などは分からないそうです。現在の蔵はその時に建て替えられたものです。
現在代表取締役社長を務める安藤正憲氏によると、以前は焼酎以外にも味噌の製造、米、芋の栽培、養蚕なども手がけていたそうです。社名でもあり、地元の定番酒として親しまれている「松の露」は、松の葉から滴る朝露の美しさから命名されました。
今町大火災は42棟を全焼したのですが、松の露酒造の本宅の横にあった蔵の石塀で燃え広がるのがおさまったのだそうです。
造りへのこだわり
いち早く機械を導入、安定した酒質に
昔は手造りしていた麹(こうじ)を、今では全自動製麹(せいきく)機(ドラム)で行っています。それまで杜氏の感覚と技術に頼ってきた温度管理や水分量などをデータ化し機械に入力することで、麹の質が均一に保たれます。ほかの蔵元に先駆けて機械を導入したそうですが、決して機械まかせではありません。さまざまな状況を考慮して調整するのは、やはり経験を積んだ蔵人なのです。
歴史とともに引き継がれてきた技と最新の技術が融合し、地元だけでなく全国各地で愛される焼酎ができあがります。
昔は日南・串間地区には20軒以上の蔵元があったのだそう。そして焼酎の仕込みの時期になると、鹿児島から杜氏が蔵子を連れて来て、焼酎ができあがるまで滞在していたのだとか。農家さんが冬の仕事として杜氏をしていた時代もあったそうです。
松の露酒造の焼酎
芋の特長を残し飲みやすさを追求
「松の露」に代表されるように、松の露酒造の焼酎は芋の香りや旨みは残しながら、まろやかな口当たりで飲みやすいのが特長です。
「焼酎は同じ原料で同じ工程で仕込みをしても、蔵元よって味が変わります。それは、酵母の状態や仕込みの環境が蔵元ごとに異なるから。貯蔵やブレンドによってさらにバリエーションも増えます。銘柄を固定せず、飲み比べて違いを楽しむのも面白いのではないでしょうか」と正憲氏は提案します。
日南地区限定オリジナル焼酎「匠蔵」
1999(平成11)年に、日南市の酒屋さんを中心に設立された「日南焼酎こだわり会」。現在19店あります。そこでしか購入できないのが、松の露酒造が手がけた「匠蔵(たくみのくら)」というオリジナル焼酎です。消費者のニーズに応えるため、酒販店と蔵元がタッグを組んで造ったこだわりの焼酎です。焼酎が苦手という人や女性にも、飲みやすいと好評です。
「造り手が取扱店と協力して開発する商品も増えてきています」と正憲氏。「今後は日南の食材と焼酎を一緒に発信していくなど、地元がもっと元気になるような取り組みができればと考えています」。
日南市の無形民俗文化財に指定されている飫肥の「四半的」。明治中期以降、焼酎を酌み交わしながら行う娯楽として親しまれてきました。今でも飫肥四半的保存会の方たちは弓を射る前に、松の露酒造の「四半的」という銘柄の焼酎を飲むのだそう。最近はスポーツとして定着してきており、射る前に焼酎を酌み交わすという光景はみかけなくなってきているそうです。ちなみに四半的は飫肥観光駐車場横で体験できますよ。
日南産の完熟南高梅を使用した「梅酒」
松の露酒造では、2014年から日南で栽培されている南高梅を贅沢に使用した梅酒「酒谷川 梅酒」を販売しています。ピンポン玉よりも大きく実った南高梅が完全に熟し、自然に落下したものをその日のうちに氷砂糖と本格麦焼酎の原酒に漬け込みます。
完熟し自然落下した梅は傷みが早いため、収穫後すぐに仕込める環境だからこそできる梅酒です。2015年春には「松の露 梅酒」も発売されます。完熟南高梅のもつ香と酸味が本格焼酎と調和した、まろやかで優しい口当たりが楽しめます。
蔵人紹介
山代成幸さん:本格焼酎を楽しみたい方はぜひ「松の露」を飲んでみてください。芋の味を追求した一本です。
徳井千代美さん:「匠蔵」は飲みやすくて女性にもおすすめです。飲み始めるとクセになりますよ。
長本龍樹さん:昔ながらの味わいのものから飲みやすいものまで幅広くそろえていますので、ぜひ飲み比べてみてください。
【写真】写真左から、山代成幸さん、徳井千代美さん、長本龍樹さん
会社概要
会社名 | 松の露酒造株式会社 |
---|---|
住所 | 宮崎県日南市今町2丁目1-16 |
電話 | 0987-25-1746 |
FAX | 0987-25-3812 |
蔵見学 | 不可 |
webサイト | http://www.matsunotsuyu.co.jp |